最後のゼミ、最後のブログ★

オスカーです。今日が最後のブログですね。何か、好き勝って書き込んできましたが、この「書く」とか、フィードバックもらうというのは、日々の自分の考えを整理する上で、凄く役に立ったなぁ、と感じました。個人的にブログを始めようかしら。

さて、今日は学生最後のゼミでした。指導教官による「地域再生」についての考察。岩波の『地域再生の条件』あたりを読むとよくわかるけど、この分野は個別性の強いケーススタディばかりで、理論化や一般化が進んでおりません。そこで「地域再生」を理論的に整理しながら、開発は自然環境などとセットでやらねばならないという結論を、我が師匠はしてました。農学部の地域計画学では、割合にポピュラーな議論ですね。

ゼミの議論は、地方財政をどう捻出するか、福祉国家のあり方はどうするか、あまり手厚い行政サービスを展開すると、逆に市民は国に頼ることにならないか、そもそも過疎や高齢化の深刻な地域は人がいなくなるからそんな呑気なことはいってられないのではないか、と百花繚乱。普段は政策論をやらないので、新鮮な気持ちになりました。

典型的な郊外育ちのオスカーは、この手の議論にはあまり入っていけず、いつももどかしいです。たまに農村に行くと、いろいろ考えるけど、この半年は論文に集中してたからさっぱり。地方分権が地方への負担の押しつけとなり、果ては新自由主義的なミニマム国家論にならないことを祈ります。後は、道州制の展開を見守りながら、自分が将来どんな行政官になれるか、思いを馳せる程度かな。


さて、新自由主義と言えば、今日、図書館で、『アル・カーイダと西欧』(ジョン・グレイ、2003)を読みました。ジョン・グレイは英国の政治学者、思想史家です。反・グローバル自由市場原理主義の論客として有名ですが、初めは論文で少し引用したJ・S・ミルの研究者として知りました。

第2章で、近代主義的な3つのプロジェクトとして、ソビエト共産主義国家社会主義(ナチズム)、イスラム原理主義を挙げています。アルカイーダのようなイスラム過激派もまた、歴史を新しい世界に至る準備段階とみなす進歩主義に立っている点で、近代の所産というところから話を始めます。

面白いのは、第3章で、近代化論者の始祖として、サン・シモンとコントを挙げている点です。サン・シモンと言えば、マルクスの思想的源泉の一人。他方、フランスのコントは、神学的、形而上学的、実証主義的の3段階発展説で有名ですが、実証主義に基づいた、社会学の祖として有名。ところで、このコント、少し変わっていて、晩年は実証主義(数学をモデルに社会科学を全て構成できる)に基づいた、「人類教」という宗教を作りました。教義や礼拝の仕方、司祭の人数まで決めていたから、かなり本格的。そして、そんな教祖による実証主義的な、つまりは合理的な信仰によって、今のグローバル自由市場は支えられているというのがグレイの主張。
簡単に議論をまとめると、だいたい以下のようになります。

→20世紀の学者は、数学(実証主義)を原理に、自然科学・社会学・経済学を構築した。
→物理学者マッハは特に絶大な影響を誇った。しかし、マッハ率いるウィーン学団、ナチズムにより多くはアメリカへ。
→例えば、マネタリスト論者のフリードマンに影響を与えた。
→古典派経済学者にとって、土台は歴史。スミスの議論も、マルクス経済学も。
→しかし、社会科学に実証主義が適用されて以来、この伝統は消え去った
論理実証主義の影響で、経済学は完全に没歴史的学問に。
→同時に、科学が歴史を動かす原動力だとサン・シモンとコントに由来する歴史哲学を受け入れた。
IMF社会工学者たちは、忘れられたカルトの信徒にすぎない。そして、グローバル自由市場経済が最良のシステムだというのは妄想に過ぎない。


似たような議論は『グローバリズムという妄想』でも転回されていますが、この前の金融危機でいよいよ説得力を持ったようです。スローガンは、普遍主義から多元主義へ。

近代化がある一つのパターンとして、全世界に当てはまると考えるのは止めなさいという、脱米国中心主義。この主張はよくあるものだけど、実証主義に基づく「人類教」(世俗化されたヒューマニズム)の祖コントから思想史的に、現代のグローバル化の状況を説明するとは、卓越した論理展開でした。まぁ、結局ぼくらは、あらゆるイデオロギーや歴史法則からは自由になれない。謙虚に、慎ましく、お互いを認め合って生きていくしかないということでしょうか。

第4章以降も読むのが楽しみです。他の自由主義に関する著作も今日大量にコピーしたので、受験勉強の合間に読みたいと思います。

というわけで、論文の要旨も提出したので、後は5、6月の試験に向けて猛勉強です。2月中に形だけでもインプットを終わらせて、3月からはアウトプットと反復!皆様も有意義な年度末をお過ごしくださいませ♪


 バッハの平均律クラヴィーア曲集を聴きながら