木曜忘れてしまったよ(泣)盛田

その日、目が覚めたら、レイ時だった。

ほんとによかった。
これが、誰もいない真夜中だったら、きっと耐えられなかったと思う。


そして夢をみたと思う。
とっても、ひどい夢。
私は真っ白い麻の服を着て、目隠しながら裸足で荒野をただ必死に登っていた。


だけど、それでも心は落ち着いていた。
悪夢はみている時より、断然覚めた時のが怖い。

長い時間をかけて、私はちゃんと絶望とおトモダチになったんだと思う。

昔は、
昔はいつもきちんと逃げ回ってた、追いかけてくる絶望や不安から。

今は、でも向き合って手さえ繋いでいる。見えはしないけど。

だから、目が覚めて、私の周りに絶望さえいなくなると、とても寂しい。
ここにあるのは、空虚な孤独の感覚だけだ。



つまり、泣き出しそう。




次の日の東京は、たくさんのビルの合間を縫って、冴えた、どこまでも冴えた青い空だった。

突然の懐かしい空。

のびやかな風が吹いていたので、私は腕を広げて受けいれる。

それは、ほんとおに優しくあちこちに触れて、すずしかった。




夏が来る、と思った。


夕日は雲だけに反射して、ピンクオレンジに頬を染める。



目にシミル。

会いたい人に、会える気がした。

もうたぶん会えない人にも、会える気がした。


それで、会いたいと思った。

いま、ものすごおく会いたい、と。



もしもあなたが隣にいて、言葉を交わせたなら、二人は同じ夏を過ごすことが出来た。

おんなじ時に始まって、
おんなじ速度で過ぎ去って、
おんなじ終わりを迎えられたのにと思う。


決して、もう嬲らないで。
チギレ雲みたいに、たゆたう。


色あせていく風を抱き寄せて、あなたを想って想って想って、

今夜、夢をみる。